
空き家の相続放棄は損か得か?費用とデメリットを分かりやすく解説
親から受け継ぐかもしれない空き家を前に、相続すべきか放棄すべきか。
税金や将来の負担を考えると、夫婦で悩みながら話し合っている方も多いのではないでしょうか。
相続放棄を選べば、固定資産税や管理の負担から解放される一方で、思わぬ費用やデメリットが生じる可能性があります。
また、他の財産や家族への影響も無視できません。
この記事では、空き家の相続放棄に関する仕組みと費用、デメリットを整理しながら、50~70歳のご夫婦が冷静に判断するための考え方を、分かりやすく解説していきます。
空き家を相続放棄すると何が起きる?
空き家を含む財産を相続放棄すると、はじめに相続人としての地位そのものが遡って失われる仕組みになります。
その結果、その相続人は空き家を含めた一切の財産も負債も承継しないことになります。
ただし、誰も相続しない空き家などの財産は宙に浮いた状態になるため、家庭裁判所が申し立てに基づき相続財産管理人を選任し、債権者や受遺者への弁済、残余財産の国庫への帰属などを進めていく流れになります。
このように、相続人と相続財産管理人、最終的な国庫帰属の関係を踏まえると、相続放棄は単に「何も要らない」と申し出れば完了する手続ではないことが分かります。
もっとも、相続放棄をしたからといって、直ちに空き家への責任が一切なくなるわけではありません。
民法では、相続人が相続を知った時から相続放棄をするまでの間、または放棄後でも次の管理者に引き継がれるまで、財産価値を減少させない範囲で管理を行う義務があると定められています。
この「保存行為」とされる管理は、雨漏りを防ぐための最低限の補修や、倒壊・火災を防ぐための施錠・見回りなど、必要最小限の措置にとどまるのが一般的な考え方です。
したがって、相続放棄を検討する場合には、どこまでが保存行為として求められるかを意識しつつ、放置による近隣への危険が生じないよう注意することが大切です。
さらに重要なのは、相続放棄をすると空き家だけでなく、預貯金や有価証券など他のプラスの財産も含めて一括で放棄する必要がある点です。
特定の財産だけを選んで放棄することは認められていないため、全体として損得を慎重に見極めなければなりません。
また、ある相続人が放棄すると、その人の子どもが代わりに相続人となる代襲相続や、次順位の相続人に権利と義務が移る可能性があり、思わぬ形で親族に負担が及ぶこともあります。
そのため、空き家の相続放棄は、自分だけでなく次の世代や他の親族への影響まで含めて検討することが重要です。
| 項目 | 主な内容 | 確認のポイント |
|---|---|---|
| 相続放棄の効果 | 相続人の地位喪失 | 空き家も含め一切不承継 |
| 管理義務と保存行為 | 価値維持のための最小限 | 倒壊火災防止など安全確保 |
| 他の相続人への影響 | 代襲相続や次順位に移行 | 親族への負担や承継範囲 |
空き家の相続放棄で発生しうる費用負担
空き家を含む財産を相続放棄する際には、まず家庭裁判所への申立てに伴う基本的な費用が発生します。
相続放棄申述書の提出には、家庭裁判所ごとに定められた収入印紙代や、連絡用の郵便切手代が必要です。
さらに、被相続人との関係や相続関係を証明するために、戸籍謄本や除籍謄本など複数の証明書を取得することになり、その交付手数料や郵送費も積み重なります。
こうした費用は個々の金額は大きくないものの、相続人の人数や戸籍の通数が増えるほど合計額が高くなる点に注意が必要です。
次に、空き家を含む遺産に債務や権利関係の複雑さがある場合、家庭裁判所が相続財産管理人や清算人を選任することがあります。
このとき、申立人は裁判所から定められた予納金を納めなければならず、その額は事案の内容や財産規模によっては数十万円程度に達することがあります。
さらに、相続財産管理人には職務に応じた報酬が発生し、その報酬も相続財産から支払われるのが通常ですが、不足する場合には申立人が追加で負担を求められる可能性もあります。
相続放棄を検討する段階で、これらの予納金や報酬の仕組みを理解し、想定される費用の幅を把握しておくことが大切です。
また、空き家の状態や管理状況によっては、相続放棄をした場合でも、特定空き家に指定されたり、老朽化による倒壊等の危険があるとして行政から指導や勧告を受けたりすることがあります。
指定や勧告を受けると、危険性の除去や周辺環境の保全のために、解体費用や修繕費などの多額の支出が必要となる場合があります。
所有者等が適切な措置を講じない場合、行政代執行により自治体が解体等を行い、その費用が後日請求されることもあります。
そのため、相続放棄を選ぶかどうかにかかわらず、空き家の状態や将来の維持管理に要する費用を早めに確認し、行政からの指導や代執行に伴う費用負担の可能性も踏まえて検討することが重要です。
| 費用の種類 | 主な内容 | 注意すべき点 |
|---|---|---|
| 相続放棄の申立費用 | 収入印紙・郵便切手・戸籍取得手数料 | 相続人の人数や戸籍通数で増加 |
| 相続財産管理人等の費用 | 予納金・管理人報酬・手続費用 | 事案により数十万円規模の負担 |
| 空き家対策関連費用 | 解体費・修繕費・行政代執行費用 | 特定空き家指定や勧告で高額化 |
空き家を相続放棄する主なデメリットと税金への影響
空き家を含む相続を放棄すると、固定資産税や日常的な管理負担からは原則として将来的に解放されます。
しかし、立地や建物の状態によっては、売却や賃貸、空き家の譲渡所得に対する特別控除などの活用機会を自ら手放す結果にもなります。
国土交通省の資料では、空き家の発生を抑制するために一定の要件を満たす売却に対して譲渡所得の特別控除が設けられており、相続放棄を選ぶとこうした制度の利用ができなくなる点も見落とせません。
また、相続放棄をすると、その人は初めから相続人でなかったものとみなされるため、被相続人名義の預貯金や有価証券など、空き家以外のプラスの財産も含めて受け取る権利を失います。
生命保険金については、保険金受取人として自分が指定されている場合は、相続放棄をしても原則として受け取ることができ、この保険金は一定の場合に相続税の課税対象となります。
一方で、相続放棄によって相続税そのものの申告義務がなくなる場合でも、他の所得との関係で所得税の申告が必要になることがあるため、税金全体の影響を整理しておくことが大切です。
さらに、相続放棄をしても、空き家の所有者が確定せず放置されれば、倒壊や景観悪化などにより市区町村から特定空家等として指導や勧告を受ける可能性があり、近隣からの苦情や相談先として相続人に連絡が入ることも考えられます。
特定空家等に指定されると、行政代執行による解体などが行われ、その費用が所有者等に請求される仕組みがあるため、誰が責任を負うのかを巡って親族間で争いになるおそれもあります。
このように、相続放棄は自分たちの負担軽減だけでなく、将来の家族や周囲への影響も含めて慎重に検討する必要があります。
| 選択肢 | 主なメリット | 主なデメリット |
|---|---|---|
| 相続放棄 | 固定資産税負担の解消 | 資産売却や活用の機会喪失 |
| 空き家を相続 | 売却や特例活用の可能性 | 固定資産税と維持管理負担 |
| 家族で事前対策 | 税負担とリスクの平準化 | 生前の調整と話合いの手間 |
50~70歳夫婦が空き家・相続放棄を検討する際の判断軸
まずは、空き家の資産価値と維持にかかる費用を整理することが大切です。
固定資産税は、建物の有無や利用状況によって住宅用地特例の適用が異なり、税負担が変わる可能性があります。
また、老朽化が進めば修繕費や将来の解体費用が必要となり、思った以上に支出が膨らむこともあります。
一方で、国土交通省の調査では空き家の発生要因の過半が相続とされており、相続前から売却や活用を含めて検討しておく重要性が高まっています。
次に、相続放棄の手続き期限と事前の生前対策の関係を押さえておく必要があります。
相続放棄は、原則として相続開始および自らが相続人になったことを知った日から3か月以内に家庭裁判所へ申述しなければならず、この期間内に空き家を含めた全体の財産状況を把握することが求められます。
しかし、短期間で判断するのは難しいため、あらかじめ遺言書の作成や財産の整理、生前贈与などで「誰がどの財産を引き継ぐのか」を明確にしておくと、相続開始後の混乱を抑えやすくなります。
国土交通省も、住まいの終活として相続前からの対策の有無を把握し、空き家の発生抑制につなげる調査や情報提供を進めています。
さらに、税金や相続に関する専門的な判断が必要な場合には、早めに専門家へ相談することが重要です。
空き家の相続放棄を選ぶかどうかは、固定資産税や将来の譲渡所得税、管理責任の範囲、相続税全体の負担など、多くの要素が絡み合います。
そのため、夫婦だけで結論を出すのではなく、可能であれば子ども世代も交えて、将来の住まい方や資産承継の希望を共有しながら判断することが望ましいです。
国や自治体でも空き家や相続に関する相談窓口を整備しており、こうした公的な情報も参考にしながら、家族全体で納得できる方向性を探っていくことが大切です。
| 判断項目 | 確認のポイント | 家族で話し合う内容 |
|---|---|---|
| 資産価値と費用 | 固定資産税額や解体費用 | 売却・活用か放棄かの方針 |
| 期限と手続き | 相続放棄の3か月期限 | 遺言や生前贈与の必要性 |
| 家族への影響 | 管理責任や将来負担 | 子ども世代の意向確認 |
まとめ
空き家の相続放棄は、固定資産税や管理負担から離れられる一方で、他の財産も含めて手放す大きな決断になります。
また、相続放棄をしても一定期間は管理義務や近隣への責任が残るため、費用やリスクを正しく理解しておくことが重要です。
空き家の資産価値や解体費用、生前対策の有無などを夫婦と子ども世代で共有し、早めに方向性を話し合うことで、将来のトラブルを大きく減らせます。
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