
空き家の相続後売却方法はどう進める?費用や税制のポイントも解説
相続によって取得した空き家を持て余していませんか。空き家をそのまま放置していると、税金や維持費など思わぬ負担がかかる場合があります。しかし、いざ売却しようとしても費用や手続き、税金について分からないことが多いものです。本記事では、相続した空き家を売却する際に知っておきたい費用や税制優遇、売却方法の選び方、注意すべきリスクや手続きのポイントまで、誰にでも分かりやすく丁寧に解説します。悩みを解決し、安心して一歩を踏み出すための情報をお届けします。
相続した空き家を売却する前に知っておきたい費用と税金のポイント
相続した空き家には、売却を検討する前に知っておきたい費用や税金があります。まず、所有者として毎年負担する固定資産税や都市計画税、さらには庭の手入れや修繕など維持管理費も無視できません。ある調査では、年間の維持管理費が「5万円未満」と回答した人が多数を占める一方、「20万~50万円未満」「50万円以上」と高額な負担を抱えるケースもあると報告されています 。
次に、売却前に必要な手続きや費用として、相続登記を行う際の登録免許税(固定資産税評価額の0.4%)や、不動産売買契約書に貼る印紙税があります 。
さらに譲渡所得税については、売却で得た利益に対して課税されます。譲渡所得は「売却価格―(取得費+譲渡費用)」で算出し、取得費が不明な場合は「売却価格の5%」を概算取得費として適用できます 。税率は所有期間により異なり、5年超の長期譲渡なら約20.3%、5年以下の短期譲渡なら約39.6%です 。
以下、主な費用や税金を表に整理しました。
| 費用・税金の種類 | 内容 | 目安 |
|---|---|---|
| 維持管理費 | 固定資産税・清掃・修繕など | 年5万円~50万円以上 |
| 登録免許税(相続登記) | 名義変更の税金 | 固定資産税評価額の0.4% |
| 譲渡所得税 | 売却益に対して課税 | 長期:約20.3%/短期:約39.6% |
節税につながる税制上の特例と要件整理
相続した空き家を売却する際に活用できる代表的な税制上の特例は、まず「被相続人の居住用財産(空き家)にかかる譲渡所得の特別控除」、通称「空き家特例(3,000万円特別控除)」です。これにより、譲渡所得から最大3,000万円を控除でき、譲渡所得税の大幅な軽減が可能です。たとえば、譲渡益が3,650万円の場合、この特例を適用すると課税対象額が650万円になるため、税額は約600万円以上もお得になります(譲渡所得税:約730万円→約130万円)。
ただし、この特例を活用するには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
| 要件 | 内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 売却期限 | 相続開始から3年後年末(12月31日)まで | 適用期限延長により令和9年(2027年)12月31日まで |
| 建物の耐震対応 | 耐震リフォーム済み、または売却前後に解体 | 売主または買主が工事を実施可(買主側は譲渡翌年2月15日まで) |
| 売却価格 | 1億円以下 | 複数売却でも合算し1億円以下 |
| 売却先 | 第三者 | 親族や同族会社などは対象外 |
| 建物の条件 | 昭和56年5月31日以前の戸建て(旧耐震)、土地とセット相続 | マンションや土地のみ・建物のみの相続は対象外 |
| 被相続人の居住状況 | 相続直前まで被相続人が単独居住または一定条件下の介護施設入所 | 同居していた場合は対象外 |
| 控除額の変更 | 相続人が3人以上の場合は控除額が2,000万円に減少 | 令和5年度税制改正の内容 |
さらに、もう一つの特例として「相続財産を譲渡した場合の取得費に関する特例」があります。これは相続税を支払った場合、その相続税額の一部を取得費に加算できる制度で、譲渡所得を計算する際の取得費が増え、税負担の軽減につながります。要件としては、相続税が課税されていること、相続開始から相続税申告期限の翌日以後3年以内に譲渡することなどがあります。
ただしこれらの特例は併用できないケースもあるため、併用不可の点や相続人が複数いる場合の控除額変動など、個々の条件をよく確認したうえで適用を検討することが大切です。特例の適用には確定申告や必要書類の提出も求められますので、適用の可否や手続きについては、早めに専門家へ相談されることをおすすめいたします。
売却方法の選択肢とそれぞれの特徴整理
以下は、相続した空き家をどのように売却するかを考える際に、代表的な3つの方法と、それぞれの特徴を分かりやすく比較した表です。
| 方法 | 特徴 | 注意点 |
|---|---|---|
| 現状のまま売却 | リフォームや解体せず、現況を維持した状態で売却 | 建物の劣化や価値の低さによっては売れにくくなる可能性があります。名義変更などの手続きも必要です。 |
| リフォーム・リノベーション後に売却 | 壁紙や設備を新しくし、物件の魅力を高めて売却価格を改善 | 費用と工期がかかり、買主の希望と合致しない場合は逆効果となることもあります。 |
| 解体して更地として売却 | 建物を取り除いて土地のみを売却。利用希望者が見つけやすくなることもある | 解体費用が負担になり、補助制度や固定資産税への影響を確認する必要があります。 |
さらに、他の売却形態として「不動産買取業者への直接売却」や「個人間売買」「空き家バンクなどマッチングサイト活用」もあります。それぞれに次のような特徴があります。
- 買取業者への直接売却:迅速で手続きや手間が少なく、仲介手数料も不要ですが、相場より低い価格となることが多いです。
- マッチングサイト・空き家バンクの活用:掲載費用や仲介手数料を抑えて自分で買主を探せますが、対応の手間や法的リスクに注意が必要です。
- 個人間売買:仲介手数料が不要で柔軟な条件での交渉が可能ですが、価格査定や契約書作成などに知識が必要です。
なお、売却手続きの一連の流れとスケジュール感は以下の通りです。相談から契約・引渡しまで、一般的には次の流れとなります:
- 不動産会社への相談
- 物件調査・査定
- 媒介契約の締結(不動産会社を利用する場合)
- 売却活動の開始
- 売買契約の締結
- 決済・引渡し
スケジュールの目安として、相談から媒介契約を結ぶまでに約1か月、契約成立までに3〜6か月程度、引渡し完了にはさらに1〜3か月ほどかかることが多いです。
売却時に注意すべきリスクと手続き上のポイント
相続した空き家を売却する際には、いくつかのリスクと、手続き面での重要な留意点があります。まず、相続登記は2024年4月から義務化されており、相続を知った日から3年以内に申請しなければ、10万円以下の過料が科される可能性があります。この手続きが済んでいないと、そもそも売却自体ができません。複数の相続人がいる場合は、権利関係が複雑化し、手続きが長期化するリスクもありますので、早めの対応が不可欠です 。
また、建物やそのままにしておくことで「特定空き家」に指定される危険性があります。これは、倒壊の恐れや衛生上の問題、景観への影響などが認められた場合、自治体から指定され、住宅用地の軽減措置が外されて固定資産税が最大6倍になるほか、過料処分を受ける可能性もある重大なリスクです 。
さらに、売却前にホームインスペクション(住宅診断)を受けておかないと、シロアリ被害や雨漏りなどが売却後に見つかった場合、売主に「契約不適合責任」が課されることがあります。この責任を回避するためにも、事前の建物状態の確認は非常に大切です 。
最後に、更地にするタイミングにも注意が必要です。建物がある場合は住宅用地の特例により固定資産税が6分の1に軽減されますが、更地にした途端にその特例は外れ、税負担が急増します。そのため、解体時期としては、固定資産税が決まった年の年明け直後など、税額への影響を最小限にするタイミングを選ぶことがおすすめです 。
| 注意点 | ポイント | 対応策 |
|---|---|---|
| 相続登記義務化 | 3年以内の登記必須 | 早めに司法書士などへ相談 |
| 特定空き家指定 | 固定資産税が最大6倍 | 適切な管理・早期売却 |
| 契約不適合責任 | 雨漏り・シロアリ等のリスク | ホームインスペクション実施 |
| 更地化による税負担増 | 住宅用地特例が消失 | 解体の時期を調整 |
まとめ
相続した空き家の売却を検討する際は、税金や手続きの違いをきちんと理解し、早めに準備することが大切です。特例や控除の仕組みも知識として押さえておけば、余計な税負担を防ぐことができます。空き家の売却には、現状売りやリフォーム、解体など多様な方法があり、ご自身の状況や希望に応じて選択可能です。また、手続き上の注意点やリスクもありますので、納得できる売却を進めるためには、分かりやすい情報をもとに一つ一つ丁寧に行動することが重要です。