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空き家の相続や売却で税金はどうなる?手続きや控除の活用方法も紹介

相続した空き家をどうすればよいか悩んでいませんか。実は、空き家をそのままにしておくと思わぬ税金やコストがかかることがあります。この記事では、相続した空き家の維持費や税金の現状、売却時にかかる主な税金、譲渡所得税を軽減する特例、そして手続きや専門家活用のポイントまで、必要な情報を分かりやすく解説します。ぜひ最後までご覧ください。

相続した空き家をそのまま放置するリスクと税金負担の現状

相続した空き家を放置すると、思わぬ費用やリスクがかさむおそれがあります。まず、空き家の総数は住宅全体の約14%と高く、そのうち多くが相続によって取得されたものです。所有しているだけで、固定資産税や都市計画税が毎年発生しますが、相続した空き家が「特定空き家」に指定されると、住居用地としての優遇措置が受けられず、固定資産税が最大6倍に跳ね上がる恐れがあります。

さらに、空き家を維持するには税金以外にも光熱費や保険料、修繕費がかかります。例えば、年間の合計維持費はおおむね10万円から30万円程度になることが多く、遠方での管理に伴う交通費などが加わればさらに負担が増します。

加えて、建物の劣化が進んだり、雑草や樹木の繁茂、不法投棄などによって衛生や景観の問題が生じると、近隣からの苦情や、最悪の場合、行政による強制的な撤去といった事態を招く可能性もあります。

このように、空き家を放置しておくことは、税金や管理費ばかりでなく、行政リスクや建物価値の下落、近隣トラブルなど多方面に不利益が及ぶため、できるだけ早めに対策を検討することが望ましいと言えます。

項目 内容 備考
固定資産税負担増加 特定空き家に指定されると最大6倍に 住宅用地軽減措置が外れるため
維持管理費用 年間10万円~30万円程度 税金以外に光熱費や修繕、保険料含む
建物劣化と近隣トラブル 劣化進行や衛生悪化、行政対応リスク 対応遅れが事態悪化を招く

相続した空き家の売却にかかる主な税金の種類と仕組み

相続した空き家を売却する際に必要な税金には、主に次のようなものがあります。

税金の種類概要ポイント
印紙税 売買契約書に貼付する収入印紙にかかる税金 契約金額に応じて段階的に税額が増加し、写しも課税対象となります(例:売買代金4,000万円で1万円×2部=2万円)
譲渡所得税・住民税(復興特別所得税含む) 売却益(譲渡所得)に対して課される税金 所有期間が5年超=長期譲渡税率(所得税15%+住民税5%)、5年以下=短期譲渡税率(所得税30%+住民税9%)が適用されます。相続の場合は被相続人の取得日から計算されます
登録免許税 抵当権抹消登記や住所変更登記などの登記手続きに必要な税金 抵当権抹消登記の税率は不動産1件につき1,000円、住所変更登記も同様です

さらに、取得費が不明な場合には売却価格の5%を取得費とみなすルールがありますが、概算取得費になるため税負担が大きくなる恐れがあります。また、相続税の申告後3年以内に売却する場合には「取得費加算の特例」が使えることもあります。こうした節税の可能性を早めに検討しておくことが重要です。

譲渡所得税の計算の基本構造は、売却価格から取得費と譲渡費用を差し引き、必要に応じて特別控除を差し引いた額が譲渡所得となり、それに税率をかけて税額を算出する形式です。譲渡所得=収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除、という形で計算されます。

譲渡所得税を減らすための税制上の特例活用法

相続した空き家の売却時には、譲渡所得税を大幅に軽減できる「空き家特例(3,000万円の特別控除)」という制度があります。この制度を活用するには、以下のような要件をすべて満たす必要があります。表にまとめましたので、ご確認ください。

要件内容概要
売却期限 相続開始から3年を経過する年の12月31日まで 令和9年(2027年)12月31日まで適用可能です。
建築時期 昭和56年5月31日以前 旧耐震基準により建てられた戸建てが対象です(マンションなどは対象外)。
空き家の状態 相続後、相続人が住まず貸さず空き家のまま 電気・ガス閉栓証明などで証明が必要です。
売却先 第三者への売却 親族など特別関係者では対象外です。
売却価格 1億円以下 上限が設定されています。

また、耐震補強工事または取り壊しについては、売却後でも対応可能になりました。具体的には、譲渡した翌年2月15日までにいずれかの措置をすれば要件を満たすことができます。

さらに、「相続税の取得費加算」の特例とは併用できず、どちらか有利な方を選ぶことになります。一般には「空き家特例」のほうが節税効果が大きい傾向があります。

手続きや確定申告での注意点と専門家活用のすすめ

相続した空き家を売却する際は、まず相続登記(名義変更)が法律により義務化されており、相続を知った日から3年以内に登記を済ませる必要があります。遅延すると罰金などのペナルティが課される場合がありますので、早めの手続きが望まれます。さらに、この登記が完了しないままでは売却や確定申告の際に問題となる可能性がありますので、注意が必要です。

確定申告については、売却によって利益(譲渡所得)が生じた場合は、翌年の2月16日から3月15日までに申告が必要です。たとえ譲渡所得が非課税となる特例を利用しても、申告そのものを行わなければ特例は適用されません。不動産売却による譲渡所得、取得費・譲渡費用が不明な場合も、税務署や信頼できる不動産会社へ早めに相談しましょう。

取得費が不明な場合は、譲渡価格の5%を概算取得費として使うことも可能ですが、それにより税額が増えるおそれもあります。また、相続税申告後3年以内であれば、相続税の一部を取得費に加算する「取得費加算の特例」や、空き家に対して譲渡所得から最大3000万円を控除できる「空き家特例」が利用できる場合があります。ただし、それらの特例は併用不可ですので、どちらが有利か事前に比較することが重要です。

確定申告に必要な書類は多岐にわたるため、以下の表のように整理して早めに準備しておくと安心です。

書類名内容備考
相続登記の書類登記申請書、住民票など義務化に伴い3年以内に提出
譲渡所得関連書類売買契約書(相続時と売却時)、登記事項証明書取得費・譲渡費用を証明
特例適用用書類被相続人居住用確認書、耐震証明書など空き家特例を受ける場合に必須

手続きや税に関する判断はいずれも複雑で、ご自身のみで対応するのは大変です。そこで、譲渡所得の計算や特例適用の可否、申告書の作成に不安がある場合は、相続・不動産取引に詳しい税理士へのご相談をおすすめします。専門家にご相談いただくことで、申告漏れや期限超過を防ぎ、安心して売却を進めていただけます。

まとめ

相続した空き家を放置すると維持費や税金が増え、将来的なリスクも高まります。売却を検討する際は、譲渡所得税や印紙税など多様な税金への理解が不可欠です。また、特例を活用することで税負担を大きく減らせる場合もありますが、要件や手続きは複雑です。名義変更や申告書類の準備、費用証明なども怠れません。不安な場合は専門家の力を借り、早めの対応を心掛けることが大切です。

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