
空き家を相続した際の売却費用は?税金や控除のポイントも紹介
相続した空き家を売却する際、「一体どれほど費用がかかるのか」「税金はどのように発生するのか」といった疑問や不安を抱えている方は多いのではないでしょうか。空き家の売却には、登録免許税や印紙税といった諸費用だけでなく、譲渡所得税や控除制度の知識も必要不可欠です。この記事では、費用や税金の基本から、賢く節約するための制度や準備のポイントまで、分かりやすく解説します。不安を解消しながら、納得のいく売却を目指しましょう。
相続した空き家の売却に関わる主な費用と税金
相続した空き家を売却する際には、さまざまな費用や税金がかかります。以下の表に主な項目と概要をまとめました。
| 項目 | 概要 | 計算例や目安 |
|---|---|---|
| 登録免許税(相続登記) | 固定資産税評価額に対して0.4%の税率がかかります。 | 評価額7,372,300円の場合 → 約29,400円程度 |
| 印紙税・仲介手数料(売却時費用) | 売買契約書に貼付する印紙税、仲介業者に支払う報酬などが含まれます。 | 仲介手数料の上限:売却価格×3%+6万円(税抜)+消費税 |
| 譲渡所得税(所得税・住民税) | 譲渡所得=売却価格-(取得費+譲渡費用)。取得費不明時は概算取得費が適用可能です。 | 取得費が不明な場合、売却価格の5%を取得費とみなせます。 |
このうち、相続登記に必要な登録免許税は、土地・建物の固定資産税評価額を基に0.4%で計算します。たとえば、土地と建物の評価額合計が約7,372,300円であれば、おおよそ29,400円となります 。
売却時には印紙税を含む諸費用や、仲介手数料が必要です。仲介手数料は法律で上限が定められており、売却価格に応じ「売却価格×3%+6万円(税抜)」という速算式が主に使われます。その金額にさらに消費税が加わります 。
譲渡所得税は、売却金額から取得費と譲渡費用を差し引いた額に税率をかけて算出します。しかし取得費が不明な場合には、売却金額の5%を取得費とみなせる「概算取得費」の制度があり、これを使うことで譲渡所得を求めることもできます 。
税金を抑えるための特別控除と制度活用法
相続した空き家を売却するときに、税負担を軽減できる代表的な制度には、「空き家の譲渡所得の3000万円特別控除」と「相続税の取得費加算の特例」があります。ただし、どちらも適用要件や期限、併用の可否が異なりますので、しっかり理解して選ぶことが大切です。
| 制度名 | 概要 | 注意点 |
|---|---|---|
| 空き家3000万円特別控除 | 相続や遺贈で取得した空き家(被相続人の居住用物件)を、相続開始の日から3年を経過する年の12月31日までに売却した場合、譲渡所得から最大3000万円を控除できます(相続人が3人以上の場合は1人当たり2000万円) | 耐震基準適合や築年数など細かい要件があります。また「取得費加算の特例」とは併用できません。 |
| 取得費加算の特例 | 相続税を支払っている場合、相続税額の一部を譲渡時の取得費に加算でき、譲渡所得が少なくなります。相続開始から「相続税申告期限(原則10か月)+3年」を期限としています | 適用できるのは相続税を納めた方のみで、遺産分割や申告の期限に注意が必要です。空き家特例との併用はできません。 |
まず「空き家3000万円特別控除」は、相続開始後から3年を経過する年の12月31日までに売却し、被相続人が居住していた住宅に限られ、耐震基準を満たすことなどが条件となります。令和9年(2027年)12月31日まで延長され、令和6年からは譲渡後の耐震改修・除却でも適用可能になるなど、要件が一部緩和されています。相続人が3人以上の場合は一人あたりの控除額が2000万円になりますので、ご注意ください。これらの詳細は、国土交通省や税理士による情報で確認できます。
一方、「取得費加算の特例」は、相続税を納めた空き家売却時に有効です。相続税額のうち売却対象不動産に対応する部分を取得費に組み入れることで、譲渡所得を圧縮できます。相続税申告期限は原則「相続開始から10か月以内」で、その期限からさらに3年以内(つまり相続開始から3年10か月以内)に売却する必要があります。遺産分割協議や相続税申告・納税が済んでいなければ適用できませんので、注意してください。
どちらの制度も、譲渡所得の軽減につながる点で有力ですが、適用条件が異なり、併用はできません。特例の適用による「節税効果」を比較し、ご自身の状況に応じてより有利な制度を選ぶことが重要です。専門家にもご相談のうえで判断されることをおすすめします。
取得費の証明と節税につながる準備ポイント
相続した空き家を売却する際には、「取得費」の証明が節税に直結します。取得費とは、親御様が購入・建築された際の費用や手数料、登記費用などの合計を指します。これらが証明できれば、譲渡所得を抑え、税金の負担を軽減することが可能です。
しかし、当時の契約書や領収書が見つからない場合、「概算取得費」として売却価格の5%が取得費とみなされます。これは、本来もっと高額である可能性があるにも関わらず、証拠がなければ低く見積もられてしまうため、結果として譲渡所得が大きくなり、税負担が増えるリスクがあります。したがって、契約書・領収書・振込記録・住宅ローン関連書類など、取得費を推定可能な書類をできるだけ早く整理・保管しておくことが重要です。
また、取得費の証明が難しい場合は、概算取得費の適用しかできず、その結果、多くの税金を支払うことになりかねません。相続時に書類の所在を確認し、相続人間で共有しておくことをおすすめします。
さらに、税金を節約したい場合には、確定申告にあたっての制度選択も重要です。「空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除」と「取得費加算の特例」は併用できませんので、どちらが有利かを確定申告時に判断し、選択する必要があります。どちらの特例を利用するにしても、確定申告は必ず行うこと、提出書類や期限などには十分ご注意ください。
以下は、取得費の証明書類と確定申告の制度選びに関するポイントをまとめた表です。
| 準備項目 | 内容 | 効果 |
|---|---|---|
| 取得費証明書類 | 契約書・領収書・振込記録・住宅ローン書類など | 取得費を正確に算出し、譲渡所得を抑制 |
| 概算取得費のリスク | 書類不備時は売却額の5%が取得費とされる | 税負担が大きくなるリスクあり |
| 制度選択(申告上) | 3,000万円控除特例か取得費加算の特例かを選択 | 最適な節税方法の選択と期限管理 |
売却費用全体を把握し、適切に準備するための視点
相続した空き家を売却するにあたっては、売却前・売却中・売却後にかかるすべての費用を見通して準備することが大切です。
まず、売却前には維持管理費や解体費用などが発生する可能性があります。維持管理では、草刈りや清掃、軽微な修繕などが必要となることがあります。また、建物の状態が劣化している場合には解体費用がかかることも少なくありません。自治体によっては、老朽空き家の解体や維持に対する補助制度を用意している場合もありますので、事前に市区町村の窓口で相談することをおすすめします。
次に、税金面では、長期譲渡所得と短期譲渡所得では税率に大きな差があります。譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていれば「長期譲渡所得」となり、所得税15%・住民税5%(復興特別所得税含めて合計20.315%)が課されます。一方、5年以下であれば「短期譲渡所得」となり、所得税30%・住民税9%(復興特別所得税含めて合計39.63%)となり、税負担が倍近く違ってきます。相続によって取得した不動産は被相続人の所有期間も含まれるため、通常は長期譲渡所得の扱いとなるケースが多い点にも注意が必要です。
最後に、売却の全体スケジュールを見据えた準備を立てることが重要です。売却を始める前に、維持管理や解体、補助の確認、税率の確認を含めた費用・税金の整理を行い、売却時期の検討も含めた流れをしっかりと計画しましょう。
以下は、売却準備のために把握すべきポイントを簡単な表にまとめたものです。
| 準備項目 | 内容 | 目的 |
|---|---|---|
| 維持管理・解体費 | 清掃・修繕費、解体の見積 | 余計なコストを事前に把握する |
| 行政補助の確認 | 補助制度の内容と申請可否 | 費用負担を軽減できる可能性 |
| 税率と譲渡時期 | 長期か短期譲渡所得かの判定 | 税負担を抑える売却タイミング選定 |
このように、費用や税金、スケジュールをトータルで整理することで、相続した空き家の売却に対して安心して対処できるよう準備を整えることができます。
まとめ
相続した空き家を売却する際には、多くの費用や税金がかかりますが、正しい知識と事前準備によって負担を抑えることが可能です。登録免許税や印紙税、仲介手数料、さらには譲渡所得税など、具体的なポイントをしっかり押さえることで、余計な支出を防ぐことにつながります。また、特別控除や特例の活用により、大きく税金を減らすことも期待できますので、ご自身の状況に合った選択が重要です。売却にあたり、取得費の証明や必要書類の確認も欠かせません。全体を通して、分かりやすく整理しながら準備することが、後悔のない空き家売却の第一歩となります。
